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箱根甲子園

箱根甲子園架空の物語

2025/08/24

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箱根甲子園架空の物語

 

自称ちょっとやさぐれちゃっているつもりの平凡な男性がスポーツカーに乗り箱根のワインデングを走り貫けてゴールの甲子園に行くお話です。

 

まだまだ序盤のため箱根も甲子園も全然出てきません。

ですが甲子園に続く物語。

 

お時間のある時にでもお付き合いいただければ幸いです。

 

 

ある男性が定年を迎えた。

やることがない。

いややることはいっぱいある、ただやる気が起きないだけ。

 

退職前はあれもこれも、旅行や食べ歩き健康のための運動など、

やりたいことやってみたいことをどうせやらないだろうと思いつつも

夢を膨らませて心の中にリストを作っていた。

 

けどリストは作っただけで、いざ定年を迎えたらそのうちにやろう、

気が乗ったらやろうそう思うだけで何もしない日々がだらだらと続く、

月日はあっという間に過ぎ去りリストを作ったこともすっかり忘れていた。

リストを作っていた時に薄々感じ、

気付かないふりをしていた「どうせやらないだろ」うという思いが

現実となり無意識のうちにため息がもれる。

 

だけど何もしなかったわけじゃない。

 

何もしなかったわけじゃない

何かしてたことの一つ

いや何かしてたたった一つのこと、、、ネット

ネットだけが今の私の唯一の趣味と言えるかもしれない。

 

ネットだけが楽しみになってしまったつまらない男は、

その生活を自分なりに謳歌していた。

いや謳歌しているつもりなのかもしれない。

謳歌していると自分自身を納得させ自分自身を保っていたというのが

本当のところだと思う。

 

だらだらと自堕落な生活を続ける自分に対しての言い訳。

夜が更けるまでネットを見て朝は日が高くなるまで寝ている。

寝たいときに寝て、起きたいときに起きる。

自堕落なことこの上なく、そしてこの上なくストレスフリーな生活。

 

1か月、2か月、半年、1年飽きもせず変わり映えのしない自堕落な生活を謳歌していた。

そんな自堕落なつまらない男もようやく心の中の何かが変わり始める。

もうずっとこのままでいいやと思い始めたころのことである。

目覚めなのか気付きなのか、何か心の中でモヤっとしたものが心の中から外へ向けて何かを発信している。形や色も臭いもない。

時折何かを発信している。

 

近所付き合いも必要最低限、顔を合わせば挨拶位はするそんな希薄でうわべだけの付き合いしかしていないし、寂しいと感じることもなく、それ以上を求めることもしない。

濃い人間関係は煩わしいだけで。

友人と呼べる人は数人。そして数人いれば十分だと。

1人で生きていける、

現代社会においては十分に一人で生きて行ける、生きて行けてしまう。

そう思い、そしてそういうように生きてきた。

 

時間、時に時の流れは人の傷を癒し愛情をはぐくみ、

形あるものはほころび崩壊を迎える。

時の持つ作用、時に残酷で、時に幸せをもたらす。

時の作用は人の心にも、やさぐれ世間を斜にみている男の心にも変化を生む。

静かにゆっくりとそして確実に時の作用が作用しはじめる。

 

「散歩にでもいくかな」ひとり言をつぶやき窓の外を見る。

今の時間は午前11時。

昨日もネットをダラダラと見たいものだけを見て聞きたいものだけを聞き、

それ以外はフタをしていつの間にか布団で眠り朝を迎えた。

午前11時、昼ご飯には早く二度寝するにはもう遅い。

中途半端な時間だが11時という時間が好きだ。

何かをするにしても午後はまるまる残っている安心感と、12時前に起きたことに対しての喜び。

これが12時を過ぎて起きてしまった日は罪悪感が半端ないのである。

自称自堕落人間だが12時を超えると罪悪感が半端ないのである。

大事なことなので2回言わしていただく。

 

だから今日は午前11時に起きれた。午前11時に起きれたことが嬉しくて普段思いもしないことを口走ってしまった。

「散歩にでも行くかな」

 

ここは関東近郊のとある街

海からはかなり離れた内陸の街

山が近く峠を越える国道や県道が複数走り

近隣には有名な観光地が複数ある

静かさと賑やかさがミックスした日本全国どこにでもあるような街

 

私は今峠道に続く県道をゆっくりと歩いている。

いささかゆっくりすぎるスピードかもしれない。

県道を走る車は少ない、騒音や排ガスに悩まされることもなく、

車が走り去った後の疾風に薄くなった頭髪も乱されることもない。

 

のんびりゆっくりと深く息をしながら歩く。

まるでリハビリでしているかのようである。

 

ただ時折、何台かに1台早い車が走り抜けていく。

飛ばしているわけでもなく、制限速度より少しだけでスピードが出ている。

押さえた感じの走り方。

制限速度をはるかに超えた速度ではない

だけど早いと思わせる車。

 

スポーツカーが走り抜けていく。

何台かに1台スポーツカーが走り抜けていく。

 

なめらかな流線形のフォルム。

凪の水面を進むボートが滑らかに水面を切って進んでいくかのように

前方の空気を滑らかにかき分け後方へと流していく。

早く走る為の形、空気を整流し整え後方の乱気流を押さえ

強引に空気を押し開き進む走り方とは真逆の走り方。

まるでチューブの中を走るかのように後を濁さない。

走り去った後はそよ風が吹く。

 

「あ~、やっぱスポーツカーっていいかも」

自然とひとり言をつぶやいていた。

 

まるでリハビリのような散歩が、だんだんと楽しい物に変わっていくの感じる。

心の中から外側に向けて何かを発信している。

モヤっとしてボヤけていて掴みどころのない何か。

掴もうとしても掴んだ瞬間霧のように霧散してしまう。

 

昔の思い出が少しずつ甦ってくる。

「あ~そういえば昔スポーツカーにのってたな~」

もうたまにしか思い出さない思い出。

 

スポーツカーが隣を走り貫けていく。

走る貫けるスポーツカーを目で追い、

遠ざかりあっという間に小さくなっていくスポーツカーを

遠い目をしながら眺めていた。

 

心の中にかすかに光が芽生え、わずかに熱を持ち始めた。

 

その時の私はまだ気が付いていなかった。

吹けば一瞬で消えてしまうロウソクよりももっと小さく種火のような

かすかな炎がともったのを。

 

遠くに箱根の山が見える。

第1章 完

 

乱筆失礼いたしました。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

 

次回は自分のスポーツカーを手に入れるまで書ければいいなと思っています。

次回もまだ箱根も甲子園も出てきません。

スポーツカーと甲子園のファンのみなさまもうしばらくお待ちくださいませ。

写真は2024/12/23 冬至翌日の箱根から昇る朝日を撮影したものです。

 


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箱根甲子園

〒250-0631 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原大原817-253

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